前書き
早くも「今年ナンバーワンのアニメ」と巷で言われているアニメがある。
そのアニメは深夜にこそこそと放送されていた『オッドタクシー』というアニメだ。
放送当時は豪華な声優にもかかわらず思ったよりも話題にならなかったが、放送終了後にアニメを見終えた人たちがSNSで次々に絶賛の感想を発信すると、口コミとしてじわじわと広がり今もなおファンを増やし続けている。
なぜ『オッドタクシー』は放送を終えているのにもかかわらず、ここまでファンを獲得できているのだろうか?
概要
『オッドタクシー (ODDTAXI)』は2021年4月から6月にかけてテレビ東京系列にて放送されたアニメ。
登場するキャラクターが全員擬人化した動物の姿をしており、セイウチの見た目をした主人公でタクシードライバーの小戸川を中心とした群像劇になっている。
声優には花江夏樹、飯田里穂、山口勝平など人気実力を兼ね備えた声優に加え、ダイアンやミキといったお笑い芸人、ラッパーのMETEORと他業種の人も多く参加している。
『セトウツミ』を代表作に持つ漫画家の此元 和津也(このもと かづや)が脚本を担当し、此元自身初のオリジナルテレビアニメ脚本となった。
ギャップ
『オッドタクシー』が注目を集める理由の一つは、動物の見た目をしたキャラクターのかわいらしさと本格サスペンスのストーリーとのギャップにある。
本作はセイウチの見た目をした主人公の小戸川をはじめ、イヌ、ネコ、アルパカなど可愛らしい動物の見た目をしたキャラクターが登場する。
ぱっと見はほのぼのとした作品と思うだろう。しかし、その可愛らしい見た目とは正反対に、女子高生失踪事件を縦軸とした本格的なサスペンスが始まるのだから、何も知らないで見た人はそのギャップに驚くだろう。
登場するキャラクターは一人ひとり性格がひねくれていたり、裏社会と繋がっていたり、心に闇を抱えていたりとブラックな面が存在している。
物語が進行するにつれインターネットを扱ったトラブルが多く見られる点から、現代の社会問題や時代背景を取り入れた作品になっている。
承認欲求が強くSNSでどうしてもバズりたいコビトカバの見た目をした樺沢
マッチングアプリで見栄を張り年収を高く設定するシロテテナガザルの見た目をした柿花
スマホゲームにのめり込み生活が浸食されていくピューマの見た目をした田中 ...
このような現代社会の闇を持つキャラクターたちがタクシードライバーの小戸川と複雑に絡み合い、次第に失踪した女子高生の事件、さらにはこのアニメ自体の謎にも迫っていく。
あまりの本格的サスペンス具合に、SNS上では考察合戦が繰り広げられたりもした。最終回の壮大な伏線回収を含め、可愛らしいアニメーションと本格的なサスペンスとのギャップが人気を獲得しているのだ。
充実したコンテンツ
さらに、根強いファンを獲得している理由の一つに“本編以外の充実したコンテンツ”がある。
『オッドタクシー』は本編に登場するキャラクターのツイッターアカウントを実際に開設し、本編の日付と同じタイミングでツイートしている。
樺沢太一、今井、笑風亭 呑楽の3人のアカウントが開設されており(現在は樺沢のアカウントしか残っていない)、日常的なツイートや「いいね」欄など本編にリンクするツイート以外の部分でも設定作りにこだわっている徹底ぶりを見せた。
また、YouTubeでは本編とリンクしたオーディオドラマも公開されている。
作中では触れられないながらに描かれている「幸せのボールペン」を巡るストーリーだ。
「幸せのボールペン」に仕掛けられた盗聴器をたまたま長嶋(キリン)が傍受し、キャラクターの会話を盗み聞きするという設定で、本編には描かれていない部分やストーリーの謎を解くヒントを聴くことができる。
本編を楽しみながら、楽しんだ後にも『オッドタクシー』を味わえるコンテンツを用意しているため、根強いファンが増えているのだ。
まとめ
現在、『オッドタクシー』はAmazon prime videoで独占配信を行っている。
今はドラマにしろアニメにしろリアルタイムでは見ずに、配信で見る人も多いだろう。
口コミで知って気軽に見れる環境が整っている、というのは勧める人にとっても、勧められる人にとっても非常に大きなアドバンテージになる。
内容が面白ければ人は誰かに勧めたくなる。
こうした制作陣の細部へのこだわりが、『オッドタクシー』の人気をじわじわと広げることに繋がっているのだ。
(文:つちへん)