プロフィール
バンド名:odol (読み:オドル)
メンバー:(左から右)
- Shaikh Sofian(Bass)
- 森山公稀(Piano,Synthesizer)
- 井上拓哉(Guitar)
- ミゾベリョウ(Vocal,Guitar)
- 垣守翔真(Drums)
結成:2014年
所属事務所:UKPM / HIP LAND MUSIC
所属レーベル:UK.PROJECT
最近では森永乳業・コーポレートムービーオリジナルソングの制作や映画『サヨナラまでの30分』への楽曲提供、劇団ノーミーツの劇伴など企業やメディアとのコラボも多い。
odol
odolを知ったのは、相鉄都心直通記念ムービー『100 YEARS TRAIN』のテーマソング「ばらの花 × ネイティブダンサー」がきっかけだ。
くるりの名曲「ばらの花」とサカナクションの名曲「ネイティブダンサー」をマッシュアップさせた楽曲は、互いの長所だけを抽出した名曲である。
その曲の歌唱を担当していたのがyui(FLOWER FLOWER)とミゾベリョウ(odol)だった。
yuiはシンガーソングライター時代から聴いていたので知っているが、ミゾベの少し色気と甘さの残る歌い方にとても魅かれた。
それで興味を持ち、サブスクリプションでアルバム『YEARS』を聴いたのだ。
『YEARS』は2016年に発売されたodolのセカンドアルバム 。
このアルバムを聴いたとき「これは後世に残すべき曲だ」と感じた。
その理由を歌詞のフレーズに注目しながら1曲ずつ紹介していく。
『YEARS』
years
1曲目からしっとりとしたバラード。
表題曲の「years」は「ゆうびん.jp/郵便年賀.jp」のWEB CMに起用されてる。
過去のインタビューで「yearsは師匠に久々に会うつもりで書いた」と話しているように、歌詞は遠く離れた人と久しぶりに再会するような物語になっている。
years=年月
短い歌詞の中から長い年月を感じるし、そこに隠れる期待感や寂しさ、その人に対する想いが伝わってくる。
家族、恋人、恩人など聴いた人が遠く離れた場所で暮らす人々に会いたくなるような、ロードムービー調のMVとピッタリの楽曲だ。
グッド・バイ
オルタナティブ色の強い楽曲「グッド・バイ」
一人にしないで 離さないで
odol「グッド・バイ」より引用
誰にも言わずに 忘れないで
odol「グッド・バイ」より引用
曲自体のメッセージとしては【二人でいたい】なのだが、タイトルは「グッド・バイ」となっている。
サビの歌詞は「一人」「離れる」「忘れる」 といったマイナスのイメージの言葉に非過去否定形の「~ないで」「~ずに」を結び付けることでよりメッセージが強調されるのだ。
気持ちとは裏腹に離れていってしまう恋愛を描いている。
綺麗な人
爽やかな疾走感のある楽曲。
なんてことも言えないし
odol「綺麗な人」より引用
キザな言葉を並べた後に、このフレーズで全て妄想であることが分かり、「綺麗な人」に対する憧れが強く表れている。
その歌詞を爽やかな曲に乗せることで、陰湿に聴こえずひと夏の鮮やかな思い出のようにサッパリと聴けるのだ。
逃げてしまおう
いつか僕らは逃げてしまおう
二人の知る人のない場所へ
odol「逃げてしまおう」より引用
2曲目の「グッド・バイ」と同じく、メッセージは【二人でいたい】である。
しかし離れていってしまう「グッド・バイ」とは違い、"まだ二人でいれる"状況にある。
その中で注目すべきなのがタイトルにもなっている「逃げてしまおう」というフレーズ。
単純な動詞の「逃げる」でも願望の「逃げたい」でもなく、意志の助動詞が使われている「逃げてしまおう」にすることで強い覚悟がうかがえる。
この曲のメッセージは【二人でいたい】ではなく【二人でいよう】なのかもしれない。
17
17=17歳
「いつか」「あの夏」「あの頃」
大人になって抱えるものが多くなった時に、17歳の思春期の不安定さを回想しているようである。
カタルシスを引き起こす儚い曲だ。
退屈
シューゲイザーっぽく響くギターが印象的な楽曲。
退屈さえ僕のものだったのに
odol「退屈」より引用
サビ前のこのフレーズ「のに」という逆説が歌詞に登場する”僕”と”君”との距離感を物語っている。
君だけには会えない
odol「退屈」より引用
サビのこのフレーズも印象的だった。
「もう君には会えない」や「君には会わない」などはよく聴くフレーズだが、「君だけにはあえない」は初めて聴いた言葉だ。
たしかに、別れたあとは君だけには会えなくなってしまう。限定されていることで、より遠くにいることが伝わってくる。
ベッドと天井
このままこうして
odol「ベッドと天井」より引用
「グッド・バイ」「逃げてしまおう」「退屈」で恋愛関係の複雑性をテーマにしてきたが、「ベッドと天井」ではあえて現状維持を望んでいる。
”なんてね”と茶化しているところがより本当の願いなんだと感じる。
夜を抜ければ
イントロからしばらくインストが続いていく。
メロディが重なっていき、テクニカルなリズム隊が加わることで深みが増して純粋にインスト曲として楽しめる。
それでいてサビの歌詞は本質を突いていて、夜を抜け朝を迎えているような気分になれる。
歌詞を”削ぎ落とす”
ポップスやオルタナティブ、シューゲイザーが入り混じったような音楽性も好きだが、やはり一番は”言いすぎない歌詞”だ。
圧倒的に他のバンドより歌詞が短い。(曲によっては10行未満で終わるものもある)
しかし、他のバンドよりも歌詞のメッセージが素直に伝わってくる。
あえて歌詞を詰め込まないことで、余分なイメージを削ぎ落とし余白に聴き手のイメージを組み込むことができる。
歌詞が多ければ伝わるわけではない。
その塩梅と言葉選びのセンスがodolの強みではないだろうか。
それに言葉が少ない分、どの年代、どのシチュエーションにも当てはまる。
「これは後世に残すべき曲だ」と感じたのは、odolの楽曲は時代を越えても共感を生むことができるからだ。
いつまで経っても、このアルバムは色褪せないだろう。
(文:つちへん)
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